女性と男性の感性が異なるのは当然だ。

ただ、その受け止め方にはズレがある。女性のばあい、乙女チックな過剰表現が誤解を招いている。

「怖-い」「キモチわる-い」「かた-い」「クサ-い」などと、いかに自分がか弱くデリケートであるかのごとく反射的に叫ぶのだが、だまされてはいけない。本性はそんなヤワでない。命を預かり守るのが使命であるいじょう当然ではあろうが・・。

「狩りガール」という言葉が使われだしたのは数年前のことである。「山ガール」の派生だが、ジビエブームの影響もあるだろう。どのみち好奇心や趣味の域にとどまっていた。

情況に一石を投じたのは2014年刊行の畠山千春著『わたし、解体はじめました』である。

11年3月の東日本大震災を間近かに体験したのをキッカケに、ことに食べ物について、生産の過程をまったく知ることがなく、お金を払うだけという事実に気づいて自らニワトリの解体を体験した著者が、ウサギ、イタチ、烏骨鶏、アナグマと進み、ついにイノシシに及ぶまでを記したものである。

食べることにしか関心のなかった25歳の女性が、心の葛藤を乗り越えながら解体~狩猟へとさかのぼっていく。「食べることは命をいただくこと」という言い方も今や陳腐に聞こえるほど、いっそう真に迫る筆致は緩急自在で楽しくさえある。

キーワードの一つが「同化」である。「お肉を食べるというのはその動物と同化すること」という達観には感動を覚える。

参考まで、農業高校で学ぶ女子生徒の割合は90年代半ばから上昇中で、現在49%になっているという。

「ジビエンヌ」は日本式造語である。「ジビエ(gibier)=狩猟鳥獣(肉)」と「パリジェンヌ(Parisienne)=パリ女」の語尾から合成した。

(2020年2月)