ある村落恒例のお祭りイベントで婦人会が「しし鍋」つくりを申し出て実行した。イノシシ肉は村内の有志が持ち込んだ。
初めてのこころみであるため事前にいろいろ調べもし、当日は朝早くから準備にかかった。
8時ごろから火を入れてぐつぐつ煮出したが思ったより時間がかかる。なにより、期待したようにニオイがなくならない。まだ煮足りないからだとみな思い込み、さらに煮つづける。
正午を過ぎたころ、祭りの参加者に催促されてよそい始めた。実際に食べた人によると「おしるこみたいだった」という。肉がフレーク状になっていたのだろう。つまり、超煮過ぎだったのだ。ニオイにこだわった結果である。
各地それぞれに炊き方がある。食べ比べ巡りもおもしろかろう。
筆者が想像し、勧めているのがスペイン料理の「パエリア」である。パエリア(パエージャ)はいろいろあって決まった定義はないが、おおまかに言えば「コメと野菜・肉・魚介類などの具材をオリーブオイルにサフランを加えて煮込んだ料理」ということになろう。サフランによる黄金色に特徴がある。9世紀に稲作が東洋から伝わったころ発祥したそうで、各地にさまざまな種類がある。肉には牛・豚・鶏が使われているので、イノシシに替えるのに何の問題もない。
もう一つ気になっているメニューが「イノシシ薬膳」である。
「薬膳」とは、中医学理論にもとづいて通常食材に薬効食材を組み合せた料理のことである。膳=料理であるから、味覚第一であるのは言うまでもないが、そのうえ健康増進に役立つとなれば大うけ間違いなしではなかろうか。
蛇足かもしれないが、現代西洋栄養学ではイノシシはビタミンB群と亜鉛の含有の多いことが注目されている。いずれも男性にとって重要な栄養素である。
(2021年9月)