「ラーメン」をトップランナーとして、日本の食文化が本家をさしおいて世界に広まっている。昨今の話題は「カレーライス」チェーン店のインド出店である。「スパゲッティ・ナポリタン」は日本生まれだが、そのうちナポリ名物に化けるかもしれない。
「ジビエ」はまぎれもないフランスの伝統食文化だが、誤解のないよう申し添えると、大都市の一流レストランで供されているだけでない。むしろ地方の町や村の特色ある料理を尋ねて大都市から客が来るというのがあり姿である。「学ぶ」の語源は「真似(まね)ぶ」であり、真似ることはそれ自体おたがいさまだが、うわべだけのサル真似は相手に対する侮辱以外の何物でもない。
要するに、「ジビエ」はもともとローカルなものであり、地方色豊かに自由な発想で創作してよいのだが、本質にかかわる部分に関しては先進国(地)に正しく、素直に学ばなければならない。
シカを例に2点示す。
(1)調理の基本を学ぶ。「加熱法」を例にとると、シカ肉の場合、急激に高温で加熱したり加熱し過ぎたりすると肉質がパサつき臭みが出たりする。加熱の基本は、バターなどをまわしかけながら弱火でじっくり焼く「アロゼ」で、次いでオーブンでじっくり焼く「ロースト」、次いでフライパンで焼く「ポワレ」とつづく。(使い分けなど、詳しくは料理指南書をごらんあれ)。
(2)「血抜き」の重要さは変らないが、本場フランスでは、逆に
抜き過ぎは風味を無くす=野生味が失われると考えられている。
期待していたソースとの相性が活かされないというのである。
それと、ワインとの組み合わせ(マリアージュ=結婚)。
「日本ジビエ」には前途洋々たるものがある。
(2020年8月)