江戸時代末期、総人口が3千万人だったころ、農民たちは自らワナを仕掛け銃をとって野生鳥獣から農地を守り、獲物は有効に利用していた。150年後のこんにち、1億2千万人の国民は森や田畑を荒らしまわる鳥獣をもてあまし、街を駆けまわるイノシシにおびえている。
「人口増加」と「国土開発」と「高度成長」は相関関係にある。人口増加は都市を中心とした現象であり、国土開発は自然環境の秩序を乱す施策でもある。
野生鳥獣にとっては、高度成長=国土開発は生活環境を脅かすものであるとともに、人間の生活圏との境界である里地・里山の意義を無に帰することでもある。この点は重要である。
総人口は2008年の1億2808万人をピークに減少に転じた。「人口圧」が減少するとともに、シカやイノシシが人間界に出てくるようになった。必然の成り行きである。
かつて「天敵」だった農民=狩猟者は、流出・高齢化・後継者不足で今や恐れるにあたらない。
唯一恐れていた(?)行政は、「駆除」と称して金のバラマキに終始し、長期展望に立った効果的な政策がない。
このままでいけば2050年には1億人を割るとの予測さえある。
もうかつてのような成長は望めない。そうであるなら、野性鳥獣を単純に、一方的に「駆除する」というのではなく、「棲(す)み分ける」という原点に立ち返って施策を講ずべきではなかろうか。
第一は、野性鳥獣と人間の生活圏をはっきり区分すること。
第二は、狩猟を職業として成り立たせること。
第三は、農山村の生活者が、自らの使命として携わること。
かくして「ジビエ文化」は自然に生まれてくる。
(2020年12月)