講演ではどうしてもシカ・イノシシが主役になる。

ひととおり終えたあとの質疑で「カラスは何とかならないか」と問われたことがあった。

平成30年度の鳥獣害被害実績調査によると、

愛媛県では、1位=イノシシ約2億3千万円、2位=カラス約4千9百万円、3位=ヒヨドリ約4千万円、

高知県では、1位=イノシシ約4千9百万円、2位=シカ約3千6百万円、3位=サル約1千6百万円、4位=カラス約1千万円となっている。

鳥類ではどの県もカラスがダントツに多い。

筆者は咄嗟に「調理した肉を缶詰にして、飢餓に苦しむ国々に援助物資として送るようにすればいいのではないか」と答えた。政府主導できちんと計画すれば、必然的に捕獲まで及ぶと考えたのである。

「カラスを食べる」と言うと驚かれるが、単に食習慣の違いであって決して「廃棄物処分」などでない。それどころか国内でも茨城県や長野県の一部地域にはカラスを食する文化がある。

好奇心でカラスを食べたという話はよくあるが、概して評価はよくない。当たり前だ。へっぴり腰でいじるのと探求心に燃えて「調理する」のとでは根本からして異なる。

長野県茅野市の『オーベルジュ・エスポワール』では「信州産ハシボソカラス胸肉のポワレとモモ肉とフォアグラのパイ包み焼き」を出していて好評である。オーナーシェフの藤木徳彦氏は一般社団法人日本ジビエ振興協会の理事長だ。

とりあえず緊急策として援助物資プランを発進させておけば、遠からず「待てよ、おれたちも食ってみるか」ということになるにちがいない。  

(2020年1月)