“害”獣の捕獲~処分は、否応なしに市町村に課せられた役目だが、なにしろ勝手がわからない。
第一、金がかかる。状況にもよるが、2千万円から4千万円は覚悟せねばならない。大半の国庫補助はあるものの負担の重さに変りはない。
施設ができたとして次の大問題は運営である。誰しも思いつくのが猟友会への委託である。対象が「野生獣」と言う一点で共通しているだけで「猟」と「捕獲」はもともと別物なのに、である。つまり見当ちがいなのだ。「わしらは食べん獣は撃たん」と言っていた古参猟師の言葉が思い出される。
ともかくも捕獲~処理が始まるとして・・、あとは無茶苦茶といっても過言でない。数をこなすだけが通常の姿だからである。
要するに「経営」の意識がまったくないのである。「経営」とは「持続性維持」と同義であり、「安定」と「開拓」の、バランスをとった追求といえるだろう。
具体的には、(1)処理原料となる捕獲頭数を一定数に保つ、(2)捕獲した獣はすべて使い尽くす、の2点が核心となる。
(1)に関して付言すると、「獲り過ぎはいけない」ということでもある。適正数の判断と維持は科学的データと体験のからんだ重要なポイントである。
岐阜県本巣(もとす)市の一般社団法人里山ジビエ会の経営する「ジビエ処理施設」は昨年度、市の定めたシカの捕獲数約1300頭を処理しきった。それまでの精肉重点策では頭数の増加に追いつかず、ペットフードの製造に活路を見出して安定化を実現したという。
ちなみに、栄養素のタウリンを体内合成できないネコにとってフードへの添加は必須であり、シカの肝臓は貴重な原料となっている。最近同施設の見学者が絶えないという。
(2020年6月)